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2020.05.10
健康情報

第4回 摂るべき油

第4回 摂るべき油 PDFファイル

トランス脂肪酸対策

トランス脂肪酸を多く含むサラダ油の代わりに日常的に使うには、太白の胡麻油がお勧めです。胡麻を煎らずに低温圧搾法で搾った無味無臭の油なので、炒めたり揚げたりするだけでなく、手作りドレッシングにも最適です。別に胡麻油業者から賄賂を受け取っているわけではありません。お勧めするにはしっかりとした理由があるのです。

第一に、熱をかけていないことです。前回お伝えした通り、油を高温で処理するとトランス脂肪酸が生まれてしまうので、熱をかけないということは非常に重要です。「調理する段階で熱を加えたら結局意味がないのでは?」と思う方もおられるでしょう。しかし、油を精製する際には、200~250℃もの高温で長時間の処理がなされます。一方、家庭で調理する際には、180℃以上で長時間加熱することはほとんどありません。二次的にトランス脂肪酸が増えることを心配するより、元の油にトランス脂肪酸が含まれていないかに気を配って、毎日使う油を選ぶことが大切なのです。

太白の胡麻油をお勧めする理由の2つめは、ヘキサンのような溶媒で抽出するのではなく、そのまま搾り出すという製法にあります。胡麻は油の含有量が多いので、ゆっくり圧力をかけることで抽出できるのです。胡麻にはリグナン類、特にセサミンなどの成分も豊富に含まれているので、活性酸素除去や肝臓の保護の観点からも摂ると良いでしょう。

他には、エクストラバージンのオリーブオイルもお勧めです。エクストラバージンとは「一番搾り」という意味です。新鮮なオリーブオイルはオレイン酸が豊富で抗酸化作用も高く、風味豊かで料理の幅を広げてくれます。その他の油を使う場合も、1.熱をかけず 2.そのまま搾り出す という、2つのポイントをクリアしたものを選ぶことをお勧めします。

さて、血管が硬くなる動脈硬化に対して、オメガ3系のDHAやEPAを含む青魚の油が良いということが、広く知られるようになりました。魚油以外に、同じオメガ3系の植物油で荏胡麻油、亜麻仁油なども注目されています。ただ、基本的に油は水となじまないので、身体への吸収率が良くないという問題があります。この点で優れた特徴を持つ次世代型オメガ3クリルオイルについて、今回は詳しく説明していきます。

クリルオイルで身体をリフレッシュ

最近よく耳にするので、オメガ3系のDHAやEPAが身体に良いということは、みなさん既にご存知だと思います。「DHAを摂ると記憶力が良くなる」「EPAは心血管系の病気の予防に有効である」ということが、様々な研究結果から明らかになっています。

生理学の観点から人間の身体全体を視野に入れて考えるならば、「良質なオメガ3を摂れば、全身の細胞膜が新しくなる」と言うことができます。つまり、身体を内部からリフレッシュできるのです。クリルオイルはこの良質なオメガ3の供給源です。

クリルとは、地球上で最も汚染の少ない南極海に群れをなして生息するナンキョクオキアミのことです。体長6センチ、体重2グラム、シロナガスクジラの主食であり、南極海の生態系全体に大きな影響を持つ生物です。このクリルから採ったクリルオイルには、

1.必須脂肪酸の〈DHA〉EPAを豊富に含んでいる

2.抗酸化物質の〈アスタキサンチン〉を含んでいる

3.〈リン脂質〉結合型である

という特徴があります。さらに、〈 〉で示した3つの成分は、脳に必要な物質しか通れない「血液脳関門」を通過することができ、脳が活性化されます。

しかも、リン脂質と結びついているので油なのに水となじみやすいことが、体内での成分吸収率アップに貢献しています。体内に吸収されやすいから、DHAを直接脳内細胞に届けることができ、また、弾力のある血管や血球、細胞膜の原料となってスムーズな血液の流れをもたらすのです。

一般的にクリルオイルに期待される効果は以下の通りです。

<クリルオイルの有効性>

1.炎症を抑える

2.脳機能を改善する

3.生活習慣病を抑制する

4.女性疾患を抑制する

この他に重要なポイントとして、肝機能の改善があります。「肝臓」と聞くと真っ先にアルコールの影響が思い浮かぶという方は、お酒の前にクリルオイルを飲むようにすると良いでしょう。DHA・EPAが肝細胞をリフレッシュしてくれる上に、リン脂質がアルコールなどによる肝障害を抑制してくれることがわかっています。

肝臓における最も重要な仕事は「解毒」ですが、これはアルコールに限らず、身体にとって異物である薬などを代謝し、毒性を減らすことです。クリルオイルを摂取して肝機能を改善することにより、身体にとって異物である薬をしっかりと無毒化できれば、薬害にあう危険性を減らすことにもつながると考えます。

また、ぜひお勧めしたいのが、妊娠中や授乳中のお母さんです。クリルオイルのDHA・EPAは、胎盤や母乳を通して赤ちゃんに移行します。小さい時から少しずつDHA・EPAを摂取することで、脳が活性化されて頭の良い子に育つでしょう。「日本人が頭の良い民族」とされているのは、日本が海に囲まれた島国で、古来よりDHA・EPAが豊富な魚をたくさん食べてきたからだと言われています。

これらクリルオイルの有効性のいずれも、1回飲めばすぐに効果が出るというものではありません。なぜなら、1つの効果だけをねらって作られた薬とは違うからです。まずは3ヶ月程度、継続して飲んでみることをお勧めします。その間に、全身の細胞膜が生まれ変わるでしょう。

まずは1日1食、油を変えてみよう!

4回にわたって、私たちの食生活に欠かすことのできない「脂質(油)」を取り上げてきました。生きる上で欠かせないものだからこそ、普段から身体に良い油を摂ることが必要です。農林水産省の統計によると、日本人は平均して1年間に13.4kgもの油を消費しています(「食糧需給表」平成28年より)。1日当たりにすると36.7g(大さじ約3杯)になります。この油のおよそ6割が菜種油と大豆油、つまりサラダ油なのです。

最後にもう1つだけ気を付けていただきたいのが、どのご家庭にもあるマヨネーズです。食品表示法でマヨネーズとは、原材料及び添加物に占める植物油脂の割合が65%以上のものです。つまり、マヨネーズの3分の2はサラダ油なのです。

「マヨネーズがあれば油を使わなくても良いのですよ」と、料理番組でまるで裏ワザのように紹介しています。でも、これは当たり前のことなのです。マヨネーズは油です。それを、油の代わりに使うわけで、それ以上の油は必要ありませんよね。

こうした現状において、サラダ油、そして、これを原料とするマーガリン、ショートニング、マヨネーズなど、トランス脂肪酸を多く含む脂質をすべて避けながら生きていくことは、高額宝くじに当選するより難しいことと言えるでしょう。それほど私たちのまわりには健康を害する油があふれている、これが事実なのです。

食事をすべて変えましょうとは言いません。外食、コンビニやスーパーのお惣菜など、時間を有効に使うための便利なサービスが私たちの生活の助けになっているのも、また事実です。食べるものを吟味しすぎると、それ自体がストレス発生の原因となります。まずは、1日3食のうち1食は良い油で調理した食事にすることを習慣にしましょう。それだけで、自分の身体に入ってくる油が年間で4.5kgも変わるのです。

脂質は、人間が緊急時に生き残るための最終的な貯蓄です。「お金を貯蓄するのは好きだけど、脂質の貯蓄はあまり嬉しくないな」と思う方が大半でしょう。しかし、体脂肪率を考えてみてください。一流のアスリートであっても体脂肪率は10%程度あります。標準的な体型の方であれば20%程度あるでしょう。これだけの割合で脂質が貯蓄されるのは、脂質が人間にとって必要不可欠なものだからです。必ず貯蓄しなければならないものなのであれば、絶対に良い脂質を貯蓄するべきです。まずは、キッチンの油を見直してみませんか。(薬剤師 吉野仁)